馬花325
流行りの歌しか歌えなくてダサいはずのこの俺〜
お前と離れ一年が過ぎいい男になっ
?
「も、やで、も。」
「しか、でいいんだ、しか。」
「も、やん。流行りの歌も」
「流行りの歌しか、だ」
「なんでやねん」
「じゃあ、じゃあだよ。キャメちゃん」
「なによ」
「流行りの歌が歌えないのと、流行りの歌しか歌えないの。どっちがダサいのよ」
「えっ、なになに」
「流行りの歌しか歌えない方がダサいだろうよ。流行りシカ知らないんだから。だから、あれだ。も、じゃなくて、しか、だ」
「面倒くさい男来たで」
今日は合コンだ
ブラウが手配した
秋葉原にあるハミカラだった
毎月5日に指定した練習も兼ねるため一軒目からカラオケに入った
テーブルには唐揚げやピザ、ポテトにサラダ、たこ焼き。ジョッキが2つにドリンクバーグラスが1つ。一人男が仕事で遅れるという。
七時半だった
キャメとオトコが席を隣にして話していた
その向かいに

「はい、はい、私私」
ビールで頬を赤めたブラウがマイクを取った
二人は唐揚げとたこ焼きを突き合っていた
「じゃあ、じゃあ。キャメちゃんがアイドルになったら、俺親衛隊1番だな。ダハハ」
「あかん。もう既にファンいるんやで。一桁やけどな。そうやな。7番」
「終わったで。2人!聴いてないやん!ほら、そこ!お前7番!」
「7番って。ブラウちゃん。俺にも名前あるし」
「ええやん。お前は7番や」
「どうしたん。ブラウ」
「知らん」
ケタケタ語る2人と、遅れる男に苛立った
何故アイツは、あの影のような男は時間さえ守らない
掴みどころのないあんな男のどこがいいのだ
カゲ
「私、はいはい」
「キャメちゃん、ファイト」
「Oasisか」
「せやで」
「女が歌うオアシスもいいな、キャメちゃん」
「ありがとう、7番」
「ああ!キャメちゃんまで」
「アハ、冗談や」
「でもあれだな。キャメちゃん。カラオケで洋楽は危険文化が日本にはあるじゃない」
「なんやそれ、そうかな」
「いや、あるんだよ。まあ、1曲はいいよね。おーいいねえ。でも同じ人間が2曲続けて洋楽入れるとアレアレみたいになるでしょう」
「なんやそれ、アホくさ」
「3曲続けると、」
「ブラウとシカ行かないからようわからん」
「しか、、」
「しか、も」
「ダサ」
「なんでやねん!8番!!」
「下がってるし!なんで!」
「降格や!何がダサいねん」
「だから、アレだよ。キャメちゃんもいろんな人と行ったほうが幅が広がるし、っていう。人によっていろんな趣味嗜好がさ」
「説教やん。まあ、でもな9番。私なかなか広がらんからな。難しいやん。友達おらんから」
きた
8時を過ぎていた
「遅かったやん」
「ああ、すまない。現場の仕事が長引いて」
カゲ

キャメは慄えた
半年前、夏まで交際していた男が目の前に現れた
土木作業に従事するカゲの体躯に幾つかのメモリがフラッシュバックした
ブラウは相方を見つめている
影は何事もないようにブラウの隣に腰を降ろした
「俺の番だ」
もはや番号さえ失った
「何か飲む」
「ああ、コーヒー」
「ブラックでいいよね」
「自分で行く」
カゲがドアを開けた
「なんで」
キャメがブラウを睨む
「私の彼氏や」
「なにいって」
ブラウが返す瞳で放った
「私の彼氏や。ちゃんと紹介しようと思ってな」
「なんでやねん。私の彼氏やん」
「前やろ。それは」
「えらい女やな」
険悪に口が開いたままだった
「どうしたんですか。2人とも」
「うるさいわ!」
こんな時は合唱があう女
「ええー」
ふと番号が恋しくなった男
ドアが開いて影が入室した
薄明かりの部屋、数を増やして散乱するグラスの類、壁に掛かるハンガーに外套が三着、空になったポテトに居座る皿、恋人みたい衣を寄せ合う海老フライ
「ギター?」
「ああ、練習しててな」
「次、順番だよ」
「ああ、秋元順子さんの愛のままで…それシカできないから」
あっ、しか、ダ 男
お前は黙ってろ 女
10番
6月






馬花324







馬花323
また妻帯者を好きになった
また自ら幸せを遠ざける
また金縛りに嵌った私の人生
また身動きがとれない
想いは伝えることなくまた据える
デスクの向かいに座る
優しく柔らかい笑顔を見る度、釣られ笑いに掛かってしまう
綻んで緩む、穏やか陽だまりのような微笑みに会える
重いままの私の足を職場へ運ぶ充足だった
八重歯が覗いて
彼が大きく笑った時に覗く八重咲の歯が小悪魔の仕業にGAPを深め男の柔らかさを一層飾り立てた
優しい牙に噛まれてみたい乳頭が程良く席を立たせた
慣れない仕事、耳障りな上席の声、重たい空気に湿気った心、私の貧弱な腕には古株の切り倒し方は授からない
給湯室で深呼吸しなければいけなかった日も、
ウォータークローゼットで泣くことを断行しなければ生けなかった日も、
昼食では一言も発声しなかった日にも、
丁度此処で勤め始めて優しく面倒を見てくれた同性の先輩がいる、なんでも言ってね、なんて良く看てくれた、いつしか
悪口なんて言っていないのです
私の知らない私の声を悪魔が使い女に唾を吐きかけていた
貴女が頼りでしたのに
教え下手なんて言っていないのです
仕事と対峙する以上に仕事を誰に聞くかに対峙するようになって個空間で爪を噛んだ

デスクに戻るといつもの席にいる、正面通し、いつも
「大丈夫?」
ああ
黄色い八重花が咲いた
男が漏らした弱太陽みたいな黄色い声
窓際の席で私は後髪で陽を受け、彼は光合成に相応しい人間だと納得できた
「はい、大丈夫です」
八重歯は隠したまま少し笑って呉れている
「目。赤い」
白くなっていきたい
「ゴミがさっき入ってしまって、大丈夫です」
彼と重ね白く綿になりたい
「うん」
「はい」
この職場で貴方だけが私のタノシミ
「なんでも言ってね」
「ありがとうございます」
ああ、ナンデモイッテネを合図にエミが拡大する
八重歯の君が開く、赤い瞼で見留めた
勘の鼻は女を濡らす、ああ
悪魔は君だった、牙は牙だった。








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