「結婚してください」

「できないでしょ、私たちは」

「一緒に抜けよう。普通の家族を築いてみないか、なあ」
「ありがとう。すごく嬉しい。けど、」
「けど、、」

「結婚はできない」

夢見ちまったんだ
ハミルENの暮らしに同調していた筈なのに、ある女に惚れちまってごく自然な家庭を欲しがった
彼女が俺の妻であるという確固たる所有が俺の心に平安を齎すのだと考えた
いや、そうだ、否、違うただ俺の者にしたかった
ハミルENの大きな家族ってのに共鳴してこの暮らしを選択した筈なのに、それこそが憎くなっちまった、
結婚否定
本気で惚れて腫れて膨らんぢまった風船みてえな心においては、絶対の掟が役所への足枷になっちまった
ハミルENのみんなは笑っているが、実のところ婚姻と動物の狭間で身悶えている奴もいるんだ
俺達は既に知っちまってるんだ
婚姻のある世界と

愛愛しげな風景と

俺は山に入った
当然、死ぬことを念頭に置いた登山だった
プロポーズを断られて俺の恥ずかしさは満潮を迎えて惨めの洪水を起こしていたし、漢のプライドは砕けちまって只の生物的動作として立ち上がることすら心身を消耗した
ハミルENの掟さえも破っちまった
惚れた女の拒絶と家への不義が重なって消沈していく心身の割に、落命に対してのみ勇気が興起していく
何とか気力を振り絞って山に入った
運良く1m×2mの看板を見つけた
そりゃ思ったさ
こんな馬花な作業はあるのか
しかし、最期くらい大馬花な事をしてみようと思ったんだ
俺は看板に遺書を書いていた
最期の最期くらいドデカク散ってやろう、って
なのによ、気配がして振り返りゃあ、妙な熊が、俺のコーヒーに勝手に口つけてやがって、
その上

熊の死んだフリ、だなんてお前に救われちまった
「なあ、ハミル。お前は俺の死気に気付いていたのか」
なあ、花美留
俺のブリーフに染みついた太陽
・・・・

「ごめん下さーい!」

「誰だ」


馬花 152
※3年間クラス替えがない
「はい、では生徒会の新任顔合せを終わります」

はあ

「どうして私が生徒会長に・・・」
キャキャは生徒会長に任命された
「私、普通の子なのに」
H高校では2月1日に生徒会の選挙がある
今年は土曜日に当たるため、2月3日が当該日だった
キャキャは4名の候補者の選挙で三分の一の得票数を獲得して生徒会長の座についた
来年度の4月から新生徒会が発足する
H高校は学年毎にA〜D組の4クラスに分かれていて、キャキャは2年D組だった
桜が散った頃、最初のクラス会で学級委員長に任命された
嵌められた、と思った
ヤンチャ系の生徒の軽いノリで、程よく真面目で抵抗する勇気にも欠けていそうな生徒を数人推薦した
流れるままに、4名の候補者の選挙で三分の一の得票を獲得してしまった
自分で言うのは気が引けるが、責任感の強い私はできる限りの任を果たした、皆の顔色を伺いながら・・
その仕事ぶりが評価されたのか、それとも。
兎も角、
私は学級委員長からステップアップして生徒会選挙に送り出されていた
H高校ではクラスから1名を生徒会に送り出す仕組みになっていた
1年生から3年生、4クラスずつ、12人で生徒会が運営される
生徒会長は3年生から選出されるのが常なので、前述させて頂いた新3年生4名の生徒会長任命選挙が執り行われたのだった
「まあ、やるしかないか」
少し、私の胸に誇りが灯った
これが選挙を勝ち抜くということなのか
どこをどう、どんな角度で見つめようと全く普通の生徒に違いない私の名を他者が記したのだ
承認欲求
マズローの5段階欲求の上から2番目に位置する高尚な欲にSEVENTEENの娘が、一丁噛みしたんだ
来年度は生徒会長と〜
そう、さっき。
クラスの皆は私をどう思っているだろう
都合のいい女
そんな言葉が浮かんですぐ消した
〜受験生。
・・・・

「シャヤ、帰ろう」
「うん、仕方ないね」
「金がない」
「ごめん」
「謝るなよ!・・・ああごめん」
「うん」
苛立った
駆け落ちした女が他者の子を孕んだ
東京で暮らすには、彼女の稼ぎが生命線でそれも途絶えた
非力な自分。
シャヤはその体でも仕事を続けようとしたが、あまりにも悲しくて全身全霊を賭けて制止した
相手の男は目星がついていると本人は言う
ソレに腹の事実を告げると、面倒事を振払うように十万円ぽっちを手渡し姿を眩ました
名古屋に帰る、17歳は決断した。
僕は決断してない
12月の初旬に事が判明して、およそ12週目の存在
どうする
僕の視界は真っ暗だ
・・・・
私は中絶を決断した
リャリャは’ちょっと待て’と言った
どういうつもりか理解できなかった
寧ろソレを望んでいると思っていた
自分の子じゃないのに、脳が変
私の胎中は真っ白だ
・・・・
少し前。
霜月にまだヌルくて、外套は必要なかった
浦安に火花を見たんだ
立冬の花火の音を聞かせてあげたくて、母さんに電話した
「リャリャ、ありがとう。一緒にいる子はどう?」
あの頃。
母さんが手渡してくれたお札1枚と大きな硬貨1枚をキャラクター物の財布に入れて、近所のスーパーまでヒヨコみたいに歩いた
じゃがいも、にんじん、たまねぎ
ご褒美のお菓子をやめて、チーズを買った
「しっかり守ってやりなさい、リャリャ」
真面目が過ぎる僕が17になって”はじめてのわるさ”に出かけたんだ
今。
「おかえり、リャリャ」
母はあの御遣いと同じように優しい笑顔で、初めてを越えた僕の帰りを待っていた

馬花 153


I want you to have it all
「はい!わかりました。宜しくお願いします」
「違う!馬花野郎!!宜しくお願い致します!!」
「よ、よろしくおねがいいたします」

あの雨の日
ハミルはナオトの元を離れて、家も捨てて、
アロヤの弟子となった
アロヤは一旦帰宅して、使用する事なくなったスーツを剥き出しのまま抱えてきた
クマはスーツを着衣して正装という名のストレッチにより大胸筋が伸び、僅かながら胸が空を見上げていた

「いいか!クマ!お前はなんだ!」
「俺は、俺は、、俺だ!!」
いいか、ハミル

「認められたいか、熊野郎!!」
「はい!御承認頂きたく存じます」
「ならば何が必要か!力か暴力か威圧か!」
「いえ。礼式、風儀、温厚篤実、心に銘しております!」
「お前はハンディを背負っている。熊は恐ろしいんだ。存在が認められたければ、ま
ずは礼を身につけろ」
「はい!」
「礼!」
45度の角度で腰を折るハミル
もっと深くと、尻を蹴飛ばすアロヤ
アロヤの厳しい教育指導理不尽シゴキが続く
怒号が響き渡る
堪える漢

悪いな、いや、悪くない、頼むよ
馬花熊花美留
なあ、お願いだ
汚い、臭い、不潔、気持ち悪
糞花美留
全てを手にして欲しい
喋る熊キモ、うげ、Hとか顔に入ってるし、ヤバ、一丁前に涙なんか流しちまって、
お前には、な、涙なんか20年早いんだよ
必要なんだ分かるか
もうやった
一番難しい

殴る痛みは覚えたか
馬花、阿呆、糞ったれ、死ね、お前は駄目熊
弱虫、泣虫、ズルい奴、嘘つき、存在価値0馬花、阿呆、糞ったれ、死ね、お前は駄目熊

トシミを傷つけたろ
痛かったか
なら、さ
もう、決めてる、始めてる
ソコから行こう
アロヤは、花美留を崖から突き落とした
転がる熊
あー桃の花がキレイだな

やり返せ
背中が隙だらけだ

やっちまえ

all done
ヘイ、one day
you

have it all
馬花 154
皮膚を焼いた
髪を染めた

タトゥーを入れたかったが、怖くてやめた
東京で惨憺たる日々を過ごした
その都市に後ろ髪を引かれるような想いは一切なく、
寧ろ反発心が芽生えたのだろうか、
生まれて初めて耳下まで髪を伸ばした
髪を切った

私は生まれて初めてオカッパにした
イケナイDNAが付着している気がした
科学が不純を証明することを恐れて、
時間の隠滅にも冷静さを欠いて、ボブ
・・・・
事が判明したのは、2025年12月の6日だ
僕は、父親になる事ができるのだろうか
ましてや、確実に僕の子ではない
課題は三つ
1つは、父親になる器が僕に備わっていることだ
2つは、僕に人の子を愛せる器が備わっていること
3つは、生活
私は後悔はしていない
リャリャには申し訳ないと思っているし、
彼のことが好きだ
“自分を大切にしなさい”
こういうセリフを幾度となく言われてきた
クソクラエ
私は、人生のクダラナサを体現したんだ
イミノナサ
生命はそんなに尊い物じゃない
自分を粗末にしなさい
・・

クソガキども

暴愛
はい
みなさん聞いてください
学級委員長の私から連絡事項があります

卒業式の件ですが
みなさん・・・

「おいミュミュ、3年の担任誰だろうな」
「えー、そのままカワキタじゃねえの」
「違うよ、チョチョ。私達クラス替えはないけど担任は毎年変わるんだよ。そうだよね、フォフォ」
「H高のルールだからね。コココ先生だったらどうする?ナャナャ」
「最悪でございます。ぼ、暴力教師でございますよね。お、恐ろしい」
「みんなうるさい!学級委員長のキャキャさんが話しているじゃないか」
みんなの雑談が収束する機会を伺っているキャキャ
1年間学級委員長を務めて、何とか話しを聞いてもらおうとか、そういう気概は無駄だと悟った
空気のように。皆から害のある存在と思われないことが何より重要だった
待っていれば、自然に凪いでくる時があってそのタイミングで一気に話し出す
これこそ、私が確立した学級委員長のあり方だった
えっ
「キャキャさん、どうぞ」
眼鏡のパュパュが右手を差し出した
初めての経験だった
「あっ、ありがとう。えーみなさん。卒業式の件です。卒業生に2年生から花束を送ることになりました。私達D組は3年D組に花束を送ります。代表者から代表者へ送るのですが、2年D組の代表者を決めたいと思います。つきましては、卒業生の先輩に思い入れがあるとか、お世話になったなど、立候補される方がいらっしゃいましたら尊重したいと思うのですが」
私がやることになりました
“学級委員長がやるべきだよ””クラスの代表だからね”
“そうだね、それでいいよ””委員長、お願いしますっ”
予想していた流れだったが、案の定だった
拒否すれば、60のシラケた目ん玉が私に注視されて私の補論を抹殺するための眼光を放つ
花束贈呈はワタシクにお任せあれ

*3年間クラス替えはない
3年生になる
17から18へ
未成年から成年へ

進路に、学業に、部活に、恋に、青春
受験に、就職に、妊娠に、出産、生徒会
そして反抗、
STORY17.EIGHTEEN ~未,成年の愛暴~
クシャクシャ

粗末
STORY2.熊と人
STORY1.ハミルEN
STORY0.生命体
馬花 155
痛む肉体に雨が刺す
アロヤから見包みを剥がされ、
崖から突き落とされた、花美留

その場所には、
山茶花が咲いていた
朦朧とする意識の中
サザンカの揺息が聴こえ
主人公は、

主人公は、

「アーハッハ、なんだあれ!」
「熊か?汚ったねえクマ!」
「ダッサ!クッサ!ヤッバ!」


「おい、助けるか」
「やめとけ、あんな野蛮なヤツ。汚れるだろ。なあ、ネックロス」

「行くぞ。あんな熊ホットケーキ」
「おっ、出た。ネックロスの語尾デザート」
「ふん」
「腹減ったな」
「なんだ、アンクナット」
「ストループは腹減らねえのか」
「あいつ、喰っちまうか」
「やめとけ!やめとけ!あんな不味そうな奴喰えるか!腹壊すぞ」
「行くぞ。放っておけ、そんなクマドレーヌ」

「やべ、パーマーの残高足りねえ」
「はあ、カフェ・ハシレ行けねえじゃん」
「俺が奢ってやルリジューズ」

religieuse フランス菓子


木の葉と枝の盛り合わせに、柚子ケーキ
あと、
スイセン

ふう、うめぇ
また好きになっちゃうな、テメェのこと
なあ、ネックロス、アンクナット
俺の、

シマシマ、かっこいい〜!!
・・・・
はあはあ

何とか枯れ木に寄りかかることができた
弱き惨めな恥熊
人間の声が熊耳クマガミに届く
「おー、熊野郎!聞こえるか。取り敢えず1匹で生き抜いてみろ。何を学ぶか。お前は家から出たんだ。一頭で生き抜くのか。ふん、仲間を探すのか。ふん、王様になるか。ヘコヘコ、強い奴に従うか」
「だめで!ダメで!駄目で!くくった紐に手をかけたら、その刹那、浮かんだ顔の奴のところへ」
駄目ね。
俺は

アロヤの声は届かなくなっタルト
・・・・

空腹を消化しなくてはならなかった
花の命を食う

花美留の腹言葉
1.ひたむきな愛 サザンカ
2.困難に打ち勝つ 山茶花
・・・・
「誰だ」
「レディニルツと言います。こちらは兄のミアイ」
「何しに来た」
「サンダルをこの山に落としてしまって。見ませんでした」
「いや、知らない」
「そうですか。では、失礼します、、ありがとうございました」
「ああ、行くのか」
「はい、さようなら」

なあ

待ってくれ

寂しいんだ
「お前はいつも一人ぼっち、何もできないくせに幸福を願うな!下を見続け、アスファルトの隙で踏まれ続ける小石の模様まで覚えその姿に自己を重ねたであろう!マンホールが好きな根暗な少年だった頃を思い出したか!あの太陽より、あの青空より、排水溝の暗闇を見続けた底人。ぬいぐるみに傷を刻み続け、これがカッコイイんだ、などと狂った勘違いで垢した罪は残忍酷薄に違わず、必ず天誅下りしキミ」

「お前こそが地獄一本道!あはダセェ!」



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