馬花 141-145

ちょっといいかい

ノメク秘書

ルミヤ社長

いかがしましたか

正月は里帰りしたのかい

ええ

北海道の方まで帰っていました

そうか

えーと

函館です

ほうほう

そうかい

100万ドルの夜景

ええ

社長はどう過ごされたのですか

家族と

そうですか

親御さんとですか

いや、親はいないから

兄弟と

兄弟?

社長兄弟いらっしゃったんですね

ああ

姉と兄と妹が

・・・・

ルミヤは仕事に行ってるし、

おねいちゃん

ご飯作って待ってるわ

行こう

レディニルツ

うん

ミアイおにいちゃん

着いたぞ

レディニルツ

よいしょよいしょ

おにいちゃん

あのお家なんだろう

帰るぜ

病院があるからな

俺は残る

アロヤは残るのか

ああ

そうか

わかった

自由に過ごしてくれ

俺たちの恩人だ

いいだろ

ハミル

・・・・・・・・

大丈夫だ

お前たちの世話にはならない

この山には残るが、ここは出ていく

そんな危険だ

冬だし何が起こるかわからないぞ

大丈夫だ

それより

財宝だ

・・・・

ただいま

先生!

どこ行ってたんですか!

もう!

すごく忙しかったんですから!

ごめんごめん

代診のコーコ先生

来てくれただろ

ええ

すごく助かりましたけど

いる?

はい

あちらに

そうか

コーコ先生

ありがとう

もう

いきなりいなくなるなんて

あなた

あなた?

助ける

祈り

励ます

もう

許して

馬花 142


ファーストレディ

由凛党クニタは地元名古屋へ帰ってきていた

昨年霜月の頃新しいBARができたと聞いていたので、若手議員による勉強会を終えて繁華街に繰り出した

1人になりたい心だった、通常なら勉強会と食事会はセットではあるが今日は同志達とは行動を別にした

暗がりの中錦の雑踏をすり抜ける

闇色スーツ姿の男達や陽色ドレスの女達を横目にして目的地へ足を運ぶ

雑居ビルの前に辿り着き、念の為てっぺんまで一通り目を通した

エレベーターで4を押す

H BAR

いらっしゃいませ

バーのママ

カシスが出迎える

カシスはもともとC子として有能なバーテンダーだった

その名の通りカシス、カンパリやチョコが代名詞であることは当然だが、現在はママとして全てのカクテルに対応している

現在H BARには、マティーニが苦手なM子、テキーラ系のT子、ギムレットの担い手G子、オペレーターを得意とする白ワインの魔術師、元テレアポO子、ホストニャンの母親でラムの名手ダイキリD子

そして、無愛のホストクウハと不倫関係にあるA子

元C子のママは経営全般に携わるため、バーテンダーとしてC系カクテルをママの妹のカンパリが担当している。C子であった

・・・・

「お一人様ですか」

「はい、初めてなのですが」

「こちらのカウンター席へどうぞ」

「ありがとうございます」

ママが対応しカウンターチェアへ案内する

クニタは打たれていた

「お酒はいかがいたしましょう」

「あ、あの。アルコール入っていないお酒ありますか」

「あら、お酒はアレですか」

「いや、そういうわけではないのですが」

「シャーリー・テンプルとかコンクラーベ。シンデレラとかいかがでしょう。オレンジとパイナップルにレモン」

「シンデレラ・・はい、お願いします」

クニタはやられていた

和装を淑やかに纏うその艶姿だった

BARでの和服とその妖艶な佇まいは、口説きたいへ走るための言い訳として充分だった

「C子シンデレラね」

「うん、わかったよ」

C子は中学生の頃小火によって外傷を負った

姉は家にはいなかったため難を逃れたが

妹には面を中心とした火傷痕がある

「シンデレラです」

「ありがとうございます」

C子がサーブする

ママが妹の隣に立ち微笑む

姉の横にC子が佇みカクテルを見つめた

なぜか分からなかった

酒を飲みに来たのに、ママのその姿を見ると呑んではいけないような気がした

誤魔化してはいけないような錯覚に陥ったのか

ママとC子と話しをしているうちに我に帰る

強い酒が欲しくなってスティンガーをオーダーした

「スティンガーです。ブランデーとペパーミント・ホワイト」

「ありがとうございます」

一口飲った

「当店は2杯までなんです」

ママがことわる

「そうですか、これで終わりですね」

「申し訳ございません、適酔いを謳っております」

「適酔い。そうですか」

30度を超えるスティンガーを進めて少し酔いが回ってきた

ママは相変わらず妖らしく微笑んで、

ふと隣のC子に眼をやって、ハッとなった

顔の模様がQUEENのようだった

FIRST LADY

馬花 143

3兄弟

赤ん坊の頃からハミルENで育った

リンダ19・ミナシ18・ヌミノ19

東名阪

リンダ東・ミナシ名・ヌミノ阪

女2男1

リンダ女・ミナシ男・ヌミノ女

血縁関係はないが、

兄弟姉妹の契りを結んだ

3人の連絡手段は

ポケベルだ

724106  なにしてる

152241 起きた

0840 おはよう

106  TEL

04510 お仕事

8181 バイバイ

714154 またね

リンダがヌミノのベルを鳴らして話ができるか確認したが、ヌミノは起きたばかりでこれから仕事に行くという、

ポケベルのやり取りだった

ヌミノのベルが鳴る

「もうリンダ、しつこい!」

「アイシテル?どういうこと?リンダ?いや、」

3人の所有しているポケベルは送信元が通知されない

自分の暗号を定めて送信者として付け加える手段があるが、

3人限りのやり取りだからおおよそどちらかの送信か予測できるため、そういった個人識別の暗号はなかった

「まさかミナシ?」

「王子になるスラ」

ミナシは王子になりたかった

そのための道を模索している

リンダは東京で理髪師になるためスクールに通っている

ヌミノは大阪でジャーナリストの駆け出しだ

喧嘩を止めるのはいつも

弟だった

王子

馬花 144


・・・・

フリダ

テンシを殺ってしまえ!

さすれば、この馬花世界はワシらの物じゃ!

ハッ!

テンシ覚悟!

フリダよ

お前は草原のよく似合う健気な女の子だった筈じゃ

どうしてそのような姿になったのじゃ

黙れ!キノコ!

儂は悲しいのう

お前もワシのことを父親のように慕ってくれていたものじゃ

懐かしいの

うるさい!

黙れ!茸野郎!

全くあんなコクなんぞに従いおって

黒様を悪く言うな!

あの人は闇の心を理解してくださるお方だ!

フン、いずれ闇から抜け出せなくなる

そして悪業でしか己を満たすことはできなくなる

それが分からんとは、

愚かじゃ

うるさいうるさい!

ラヴピは!

厳しく苦しい修行に耐えたぞ!

なに!

元々、恋人同士じゃろ

何故お前達は歪み合うようになってしまったのじゃ

アイツが悪いんだ

何があったんじゃ

何をしている!

フリダ!早くやれ!

ハッ

甘いわ

フリダ!

何!

当たらない!

まだまだ

若い!!

うわー!

ま、眩しい!

・・・・

結婚は認めません

イケルは横浜は磯子へ来ていた

「結婚はできないってどういうことですか。アキカさん」

「ただ既婚者はハミルENの人間になることができないってことだけだよ」

「どうしてですか」

「家族を築くからだ。婚姻による家族を築いた人間はそちらに集中した方がいいし。血をとるか金をとるか」

「血か金?」

「どちらの紙をとるかの方がいいかな。婚姻届や離婚届と対峙するのか、札の紙を家族の

絆とするのか」

「さっき言ってましたけど、お金の共有化で家縁とするってことですよね」

アキカの事務所のソファでテーブルを挟み向き合う2人

男は少し右上を見上げて右手で襟足に触れた

「ねえ、イケルちゃん。どっちの紙が強いと思う」

「えっ?強い」

「うーん、ちょっと想像してみて。イケルちゃんが結婚していたとして、旦那とは一緒に暮らしてる。けど財布は全く別でお互いの経済状況は何も分からない。相手は知らないところで多額の借金をこさえてたりするかもしれない。

一方、

婚姻や血縁は全くないんだけど、財布は一緒なの。例えば3人だとして。知らない男女がいるとしてね、その2人と稼ぎを合わせて3人同額を配分する。だからイケルちゃんの方が稼ぎが少なかったら、得だし。でもイケルちゃんがいつか大きな額を稼ぐようになればその2人は喜ぶし。真実の尊敬っていうのはね。分け・・・まあ、いいや」

「言ってる意味は分かりますけど、可能なんですか」

「どっちの方が絆が強いと思うかってとこだね。結婚してるけど本当のところはよくわからないみたいな。あるいは財布、つまり経済状況だけは確実に把握している関係か」

「お金のことが把握できてれば安心だとは思いますけど」

「それが資本主義で、財布軸が一番理に適ってる、はずなんだ」

漫画みたいにキョトンとするイケル

「だから僕らの本拠地は愛知の名古屋だけど横浜の俺も家族。財布が一緒だから」

「へ、へえ」

「財布を理解していれば、困った時はみんなで必死になるし、豊かな時はみんなで裕福になる。分かる?財布の理解」

「さ、財布の理解。それが家族ですか」

「そう、家族の定義なんていくらでも破っていい」

「そ、そうなんですか」

「例えば、想像してみて」

「ま、またですか。は、はい」

「イケルちゃんの現在の一般的な家族ね。お父さんとかお母さん。病気になったとかお金がとか」

「はい」

「助けるよね」

「まあ、できるだけ」

「なんで?」

「家族ですから」

「うん、今の”家族ですから”覚えておいて」

「えっ、は、はい」

アキカが顎を摩って生花瑠の目ん玉を直視する

「イケルちゃんの家の隣人がお金貸してくださいって、助ける?」

「えっ、いやそれは難しいです」

「うん、隣のお家の人が介護が必要で面倒看れる?」

「ええ、いやあ、長期的には難しいと思います」

「さっきなんて言った」

「えっ、家族ですから?」

「つまりね、家族だから助けるっていうのは、”家族しか助けません”っていうのと同義な訳なんです」

「家族しか助けない」

「うん、じゃあ家族の定義をどうすればいいですか」

イケルは黙った

大きく大きくするんですよ

生花瑠は湿って

秋火は棒起した

なあ、愛地

だから、つまり

家族を広げるんだ

協力しあう範囲を

且つ

バラバラだ

仲良くなくていい

深く関わらなくていい

一点のみ

金で繋ぐ

最大物質を薄める

そして向かってく

広愛主義

「ねえ、ユーメ」

「うん、イケル」

「汚して」

「なに?」

「初めの一歩」

「けがれ」

汚れを

知らずに

愛を

詠えるか

下を目指せ

深愛

汚れちまえよ

上じゃねえ

深さを

知らねえと

底を

知らねえと

浅愛

けがれりゃ

洗えば良

沈めよ

「ユーメ、おしっこ、かけて」

一番深で広ってこい

赤い縄

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