馬花 136-140

新年明けて

横浜関内のユーメのアパート

「ユー君、明けましておめでとう」

「イケルおめでとう。ちょっと待ってろ」

「うん?なに?」

「どうぞ。今年はお茶を始めることにしたんだ」

「へえ、いいじゃない。私もやってみようかな」

「一緒にやるか?」

「でも、私はとりあえず花をやらないと」

「花?」

「うん」

「そうなの?いつから」

「まだ決めてない」

「なんだそれ」

「ねえ、ユー君」

「うん」

「あのね、ハミルENって知ってる?」

「ハミルEN?なんだそれ」

「この間ね、ネイリストのアキカさんと知り合ってね」

「男か?」

「うん、そうなんだけど」

「チッ、どこで知り合ったんだよ」

「事務所の人だよ」

「チッ」

「でね、その人はハミルENの人なの」

「なんだよそれ。気味悪いな」

「聞いて。なんか名古屋が本拠地らしいんだけどね。関東は横浜が拠点で磯子の方らしいんだけど」

「磯子?そう遠くないな」

「うん」

ウズウズし始めたユーメと遠い目をしているイケル

「で、それがなに?」

「血の繋がりじゃなくて、お金で家族を築く」

「はあー、何言ってんのお前」

「経済を等分するんだって」

「ちょっと待てよ。訳わかんねえよ」

「全員の稼ぎを合わせて均等に配分するんだって。格差を消滅させる」

「何言ってんだよ。資本主義なんだぞ。よくわかんねえけど」

「だから。無限に・・かぞ・まあ、いいや。しよっか」

「はやく」

う、うん

はあ、気持ちいい

ねえユー君もっと

はあはあ、いきそ

そのままでいいから、今度会ってみない

はあはあ、いく

行ってくれるの?

ち、ちがう、そっちのじゃない

あっ

はあはあ

あーいく

はあはあ

私、いく

ダメだ、いくな、生花瑠

うん、わかったよ、夢くん

アキカさん

馬花 138

呼んでる

誰かが

私を呼んでる

レディニルツ

エメラルド山か

大晦日に

行ったきり

僕らは締詣

俺も行く

長男だし

サンダルも落としたんだろう

行こう

待ってて

誰か

・・・・

行くぞ!

あれか

イルネ

ああ

熊だな

ん?なんか赤いのがいるぞ

注意深く進むアロヤとイルネ

ハミルが気付いて顔を少し上げる

“やられる”

人が注意深く進む

獣は警戒心よりも半ば放棄した様な面持ちだった

最期の時か、足音がカウントダウンのように聞こえた

「おい、熊」

アロヤが話しかけるが応じない

「ナオトの使いで来た」

その名前を聞いてハッと瞼を見開く熊

脳が思考するよりも早く

「ナオトは無事か!」

「ああ、そうだ。足をやられたがコイツが処置したから大丈夫だ」

「そうか、よかった」

「お前を助けに来た」

「・・・・」

「そのライオンはなんだ」

「トシミだ。俺が彼を傷つけてしまった」

「わかった。話は後で聞く。開けてやる。安全か?」

「俺たちは何もしない」

アロヤが針金やバタフライナイフを取り出し作業を始めた

錠を細やかにイジる

「おい、アロヤ。何やってる。簡単には開かないぞ」

「任せとけ」

ハミルがトシミに近づいて立て髪を撫でていた

イルネは応急箱を取り出し軟膏と包帯を用意した

5分程経過した

「開いたぞ」

「待て!」

「何してる!」

銃を構えるラララ

あまりにも早くアロヤがナイフを投げつけた

躱すラララ

投刀の勢いを利用して走り出しラララの腹に飛びつき押し倒す

銃を奪い形勢が裏返る

「わかった、降参だ」

「大人しくしろ、殺すぞ」

「何もしない。お前たちの好きにしろ」

「あの熊を連れてく」

「わかった」

「ライオンもだ」

「それは・・わかった。トシミが応じればな」

「ん?」

「俺たちもトシミもここからは逃がれられない」

「何?」

イルネがトシミの処置を終えた

「すまない、医者」

「ああ、行くぞ」

「俺は行かない」

「なに?」

「俺はサバンナで縄張り争いに負けたライオンだった。瀕死の俺を救ったのがHPHPだ。今はこんな風になったが昔は良い組織だったんだ。監督が二代目の息子に変わってから・・」

「わかった、喋るな」

アロヤとラララが睨み合う

「俺たちは親のいないガキだった。いや、生まれてすぐ捨てられた連中だ。此処はそういう人間を引き取って育てていた。いわば俺たちの家なんだ。あのライオンも此処に救われた。あの馬花息子が宝探しなんて言い出さなきゃ」

「宝?」

「あゝ、この山には財宝がある」

「本当か」

「知らねえ。あの馬花息子がそう思い込んでる。夢で見たってよ」

「夢?馬花なのか?」

「その通りだ。ただ、アイツには不思議な力があることも事実だ。俺たちも図りかねてる」

「・・・熊を出せ」

「えっ」

ラララを自由にさせないために、背中に銃を突き立て歩かせる

扉を開かせて、ハミルを救出した

「銃はもらってくぞ。イルネ、行くぞ!熊、こい!」

アロヤの後ろに人と熊。アロヤが銃を構えながら後退りする。充分な距離を確保してから、3つの生命体が走り出した

・・・・

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馬花 140

おかえり

「アロヤ、イルネすまなかった。ありがとう」

ナオトが2人に礼を告げた

「ふう、まさか本当に喋る熊がいたとはな」

「驚いたぜ。しかもライオンまでいやがった。アイツも話ができたぞ」

ハミルが神妙な面持ちを浮かべる

「みんなありがとう。あの、医者の・・」

「俺はイルネだ、よろしくなハミル」

「うん、よろしく。トシミはどうだった」

「とりあえず傷口の手当てはしたから大丈夫だろう」

「すまないすまない」

ナオトは安堵の表情を浮かべて満足感を醸し出していた

「でも無事帰ってこれてよかったな。ハミル」

「ナオト」

1人厳しい表情を浮かべる男がいた

「おい、熊」

ハミルがアロヤの方を振り向く

「うん」

「なぜライオンが血まみれになった」

「俺がやったんだ。檻の中で俺たちは・・やらなければ俺達は撃たれていたかもしれない。トシミは優しい奴だった。俺に攻撃するように指示した。俺は仕方なく彼を・・」

「てめぇ馬鹿野郎。それであのライオンを紅く染めたのか」

「しょうがなかった・・」

「てめえ!」

イルネが左手で怒る男を制御した

「おい、アロヤ」

「おい、アロヤ!ハミルを責めるなよ!俺が悪いんだ。俺がお前たちを巻き込んで、ハミルも助けられなくて・・」

ナオトが堪らなくなって口を挟む

「そういうこと言ってんじゃねえ!熊の性格が気に入らねえんだ!やれって言われてやりましただと!」

ハミルの頭が垂れる

「だって」

「だってじゃねえ!なぜお前は自分がやられる方にならなかった」

「だってトシミが!やれって」

「情けねえ!女々しい奴だな!チンポコついてんのかこの野郎!男なら」

やられるほうをえらべ

よわむし!

・・・・

ハミルごめんね

ばあちゃんが厳しく育ててあげなかったから、甘やかしてすまないすまない

これからは男の人に育ててもらいなさい

いつでもお山の上からみてるよ

ほんとうの男の仔になれたなら

ばあちゃんが降らしてあげるよ

エメラルドの狂乱雨を

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