わ ~messages~ ①-12

メッセージアプリを閉じた

ゆりかもめがユーメを運ぶ

お台場にいた
小中高とサッカーで心身を鍛えてきたユーメはフットサルチームに所属していた

練習を終えて帰宅の路を辿っていた

ゆりかもめから新橋で降車する
東海道線で横浜まで行って、京浜東北線で関内で下車する
そこから10分弱歩いたところにユーメが暮らすアパートがある

軽い振動を右の太腿が受信して、メッセージアプリを開く

「チッ、なんだよ」
(わかったよ、おやすみ)

そのままニュースアプリを立ち上げて、スポーツ関連の見出しをスクロールしていく

・・・・
SEXしたかったな
・・・・

ゆりかもめが新橋に到着して下車した
暗闇の中を行き交うスーツ姿を横目にしながら、烏森口の改札へ向かう
来年に迫った就職活動が脳裏をよぎり、フットサルで高揚した気分を湿らす

改札を通り京浜東北線へ向かった
東海道線の方が早く帰宅できるだろうが、彼女と会えないなら急ぐこともないから

乗換がない京浜東北線を選んだ

ホームに上がり視界が水色を捉えるのを待つ
程よく2,3分したころに、シルバーとスカイブルー の車両の足音がホームに轟き、停車した
この時間だし座ることができるほど空いてはいなかったから、乗り込んだ反対側のドアにもたれかかるように立った

頭をからっぽにして
車窓から見える景色を眺める
いつもの景色は代わり映えはしないが、落ち着くし、生活の一部だった
来年にはその車窓の風景にはネクタイをしている俺が移るんだろう
この変わり映えしない平穏の景色をリクルートブラックスーツが湿らしてしまうのだろうか
現実から逃げるように、目を瞑る

目を閉じながら、ハタチの欲望を乾かす
関内のユーメのアパートで彼女を抱いて、その後あのラーメン店まで散歩してコッテリを食べて、
彼女と手を繋いで家路を辿る
帰宅して風呂に入って、トコに着く
明日の学校は起きた都合で考える
ベッドの中で彼女の胸や太ももを弄りながら、心地良さの中でグッスリと夢を見る

そんなプランだったのに
彼女が今日来る筈だったのに

・・・・

関内駅に着いて田舎の親が借りてくれたアパートに向かって歩く
メッセージアプリを開いて
彼女にメッセージを送る
(いつ会える?)

やはり
SEXに会いたくて事を急いた
SEXの日取りをはっきりさせたかった
それによってマスタベーションのスケジュールを組まないといけない

前回試しに1週間我慢したら、

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めちゃくちゃきもちかった

・・・・

メッセージを受け取ったイケルは
(土曜日会えるよ)

・・・・

4日後か

どうすればいいか
するのか、しないのか
右手の誘惑に悩み苦しむ
20歳の10月が始まった

to be continued
②イケル

宮前区の自宅から
バスに乗った
運転手が終点の溝の口をアナウンスして
停車したバスから降りた

ユーメの住まいに向かう
田園都市線ではなくて南武線の武蔵溝ノ口に向かう

私の実家は少し不便で溝の口駅と宮前平駅または向ヶ丘遊園駅に行くことが可能だけど、どの駅も歩くと30〜40分くらいかかる
一番勝手が良いのは溝の口だから、利用頻度は最も高い
小田急線の方が都合が良い時は、向ヶ丘遊園か登戸を利用する

溝の口に来ると、ハタチになった私は立ち飲み屋街の情緒に惹かれる
しかし一人で行く勇気はないし、今度ユーメが来てくれた時に一緒に行ってみたいと思う

私は実家住まいだから、2人が会うのは専ら一人暮らしのユーメの家だ
関内だから、みなとみらいや中華街も歩いて行けるくらいだし、山下公園で氷川丸を横目に長閑に散歩したりする

ユーメは私と同じ年のハタチの男だから実家の女の家には、宿泊もできるわけなく、寄り付こうとはしない
交際が始まって9ヶ月程になるけど、1度しか東急寄りの川崎市には来ていない

・・・・

武蔵溝ノ口から南武線に乗って京急寄りの川崎市に向かう
川崎駅に到着すると乗換で京浜東北線に向かう
ホームに上がるとshilverにbaby blueの模様を施した車体が具合良く止まっていて、そのまま乗り込んだ
土曜日の15時を回った頃で車内はまばらで席に着くことができた

水色のLINEの電車の長尺のシートの端に座りながら、メッセージアプリを開いた

1通のメッセージが目に留まった
(和食と洋食どっちがいい?)

・・・・

ユーメと付き合う前に、3ヶ月程交際していた男性がいた
彼は36歳で私は19だったからダブルほどに齢は離れていた
彼は商社系の企業に勤めていてエリートの雰囲気を醸し出していた
私のアルバイトの同僚の紹介で知り合った人だった
何度かデートに行き、今このラインが運ぶ方角みなとみらいに行ったりもした
悪い人には感じなかったし、世間的に評価されているタイプの人間だと思った
付き合おう、と決めつけられた未来のような告白をされたが断らなかった

交際が始まると、彼はあるルールを提示した
食事をした時。彼との交際では全てが外食で割と高級なお店に連れて行ってくれた

彼は言った
「俺は女を甘やかさない男だ」

彼は食事代を全額奢るのではなくて、1割を私に支払わせた
彼が会計を済ませるが、そのあと私は彼に1割を支払う
1,000円や2,000円を彼に手渡した

このルール
最初はいいかもしれないと思った
それほど大きな負担にはならないし、毎回奢られるとこちらも気が引ける
一応支払いに加わったという既成事実が、こちら側にも過度の感謝を伝えるという仰々しさを省略させる

彼はある程度の年齢だったから、1割支払わせるというのは、私に気を遣わせすぎないための配慮だったのかもしれないし、
ただでさえ年齢に差があったからこそ、それによる上下関係を少しでも緩和させるための処置だったのかもしれない

二人のルールだった

6回目の食事で私はこのルールが面倒になった
と言うよりも、36歳の商社マンの話しはところどころに自慢が食い込んできて、俺はあの施設の建設に携わったとか、有名企業の社長とゴルフに行ったとか、19の私には煩わしさを感じるようになっていた

それに比例して1割ルールも億劫になった
最初は彼の心配りか交際を長く続けるための秘訣なのかな、と思ったが
1,000円を手渡す時には、

ちいさい男だな、と思ってしまった

「俺ならサファイアが特別価格で手に入る、どうする?1割だけどな」
宝飾品まで1割ルールにするのか
幾らくらいするんだろう
きっとこの男のことだから、見栄を切ってそう安価の宝石などは買わないだろう

10万で1万、20万なら2万、30万なら

19歳の私には結構な痛手だ

「結構です」
この頃には、私の態度も良くないニュアンスの仰々しさを帯びていた

・・・・

会計が11,000円だった
7回目の食事だった

「1,100円な」

野口英世の表情が物憂げに見えた、
100円を取り出す時には、
私の表情も物憂げだったに違いない

コインを彼の手のひらに落としたと同時に
別れを決めた

100円が私の手切金となった

・・・・

そのあとを誘われたが、今日は帰ります、と言い
田園都市線に乗り込んだ

車内である言葉が私に降りてきて
私はメッセージアプリの彼の登録名を

“100円の男”に変更した

・・・・

100円の男の最後のメッセージは
(和食と洋食どっちがいい?)

19の小娘から振られる36の男の心情を
私なりに配慮して

私は勝手に男の前から消えた

それから
2ヶ月ほどして
ユーメと出会った
気楽でいい
割り勘にしたり、その時に応じて
ルールなどない

今日もユーメに抱かれたなら
一緒に
あのラーメン店でコッテリを食べよう

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今夜は私の奢りだぜ

to be continued
③100円の男

わ ~messages~ ③天王寺

③ショーヤ

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10月中頃でも日が照っていて、心地良い暖かさを感じさせる昼下がりだった
あべのハルカスの展望台を下る
そのまま天王寺公園へ向かってただ歩く
動物園にでも寄って気分転換をしようかと思ったが、虚しさが増すばかりだと気付いてやめた
芝の緑に少しばかり心を慰められながら歩いた

転勤してきた
東京から大阪に赴任したばかりだった
観光も兼ねて一通り大阪の街を見ておこうか
休日を利用して、今通天閣を目指して歩いている

10月1日付で大阪支社への異動を命じられたが、
おまけに部署異動まで命じられた
入社以来繊維部門にいたが、鉄鋼部門への配属となった
土地の変化より、取扱う製品に対しての未経験が不安だった
体育会系気質は強まるし、溶け込んでいけるだろうか
そんな想いを抱えながら上阪したが、不安は現実となって苦悶の3週間を過ごした

通天閣に向かう前に、腹が減ったから串カツ屋に入った
満席だったから相席でよろしいか、とのことだった
構わないと告げて、テーブルを挟み女性と向き合った

・・・・

支払いを済ませると、彼女は支払うと言ったので
2割分の現金を受け取った

QRコードを交わしてメッセージアプリを閉じた
彼女の名前に(化粧品)と付け加えた

東京での1割を改めた

#HAMIRU
#ショーヤ
#わ

④パツン

相席になった男とメッセージを交換した
彼は東京から転勤してきたと言った
私も同じ境遇だから親しみを感じたのかもしれない
知らない土地での同郷の響きに頼りを覚えた
彼は総合商社に勤めていると話した
支払いの2割の1,000円を彼に手渡して、別れた

(宜しくお願いします)
同様のメッセージが2つ並んだ

・・・・

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東京でハンドモデルの仕事をしていたが、事務所の人間のツテで化粧品会社への就職の話しの紹介を受けた
大幅増の安定した給料を受け取れる
前のめりに話を聞いた
勤務地は大阪だった

関東圏にしか住んだことがない私にとって関西は恐怖だった
言葉の違いや東京人は嫌われるのだろうという偏見が私の脳内を跋扈した

「今はもうそんな時代じゃないから」

事務所の人間の心許ない後押しを受けて決意した

11月からの勤務が始まる前に通天閣に来た
その帰りに寄った飲食店で彼と出会った
新たな街と出会いに心がざわついた
37にして新世界に立った

・・・・

家に帰ろうと徒歩で今宮駅方面に向かう

家のそばに来ると小さな理髪店の前を過ぎる
引越して間もない頃、毛先が気になって美容室を探したが慣れない土地の不安からなかなか決めることができなかった
家のすぐ近くの理髪店は暖かい雰囲気で店構えを眺めるだけで心が整った
つられるように足が導いた

女の私にとって理髪店の空間も新世界だった
店内の設備や匂いはやはり男性的な重厚感があって、その落ち着きの備えは私自身にも落ち着きをもたらした
前髪を揃えてもらった
毛先を整えるくらいのカットで、主人は300円でいいと言ってくれた
「また、おいで」
その気さくな人柄に私は、
大阪が私を受け入れてくれたように錯覚した

(来週土曜日の午後に行きます)

小さな理髪店を通り過ぎながら
予約のメッセージを送信した

#HAMIRU
#パツン
#わ

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⑤カツト・ヘリタ

わ ~messages~

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「はい,2,400円ですね」

カットとカラー、シャンプーの値段をヘリタは支払った

黒髪を残しつつ黄色に染めた

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理髪店の空間が好きだった

落ち着いた内装に重厚感のある設備

油圧式で上下動、背もたれの傾動する美しき椅子は

どことなくガンダムを思い起こさせた

街中の小さな理髪店では珍しくオートシャンプーの心地良さを味わった

頭部の洗髪によって心身ともに清められた気分になった

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「マスターありがとう」

「ありがとうございます、ヘリタさん」

「また一段と男前になりましたね」

「これ以上は困っちゃうなあ」

このやりとりを10年以上繰り返している

マスターに手を上げて店を出ようとしたところで、若い女性が入ってきた

長く通うこの理髪店で初めて目の当たりにした光景だった

数人の女性が常客なのは知っていたが、20代だろうか、若く美しい女性でマスターも隅に置けないと思った

去り際に耳に残したマスターと女性のやり取りは、親し気だった

黄色に染めてアップデートした頭髪を早くあの人に見せたい

(今から行ってもいい?)

メッセージを送信しながら隣駅の芦原橋方面へ歩いていく

吹き抜ける風を頭部だけが受けているような、刺激の集中とも言えそうな爽快感を頭皮で感じた

返信は来なくてもあの人の家に向かった

雑念ないスッキリした頭が思い浮かべるのは彼女だけだ

似合うと言ってもらえたら嬉しい

頭皮の薄い僕の恋人はレースクイーン

足が徒歩のアクセルを踏んで回転数が上昇する

早く見せたい僕の、精一杯の洒落っ毛を

#HAMIRU

#カツト

#ヘリタ

#わ

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わ~messages~

⑥クシ

(今日は会えない)

レースクイーンの仕事だけでは食べていけないから、イベントコンパニオンのアルバイトを兼ねる
寧ろ生計の中心は派遣の方だった
レースがある日程は限られているから、トップクラスのレースクイーンにならない限り本職だけで生活を成り立たせるのは難しい
あとはサーキットを疾走する貴公子たちの心を、滑らかなハンドル捌きと繊細なシフトチェンジで、私に向けることができるか

彼氏にメッセージを送信して、家を出た
彼は一般的な会社員で優しくてほっこりする
薄毛だけど気になったことはないし、むしろ男らしさの象徴とさえ感じていた
一方で、貴公子たちの助手席に座る理想も忘れていない

アパートを出て大正駅方面に歩いていく
途中にこじんまりとした古風な銭湯があって、あそこで仕事が入った時には立ち寄り入浴して心身を清める
数回通ったうちに番頭の白髪と親しくなり、今ではメッセージのやり取りをする仲だ
銭湯を出る時には番台には彼ではなくて黒髪のレディが座っていたから、外に出たと同時にメッセージした

(いいお湯でした)

サッパリした心持ちで歩を進めて大正駅を越えていく
バイクショーのイベントだ
徒歩にブレーキをかけて球形の屋根を見つめた
「ふう」
心のエンジンを掛け直すとクリープ現象が起こり私の脚がオートマして、ドームに向かって歩行した

#HAMIRU
#クシ
#わ

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⑦フリョ

あいよ

今日の番頭も終わりだい

クシちゃんからメッセージが届いてりゃ

(いいお湯でした)

返信しとかねぇとな

(ありがとさんまたおいでよ)

ちょっと一汗流していくか

・・・・

湯気でよく目が見えねぇな

コスリコスリ

ん?オリャ

目が悪くなってんのかい?

・・・・

(おい、ンタク。我が娘よ。久しぶりだな)

(なに、お父ちゃん)

(おい、お前眼鏡屋だろ。オリャ目が悪くなったまったみてぇでよ)

(ふーん。で)

(で、じゃねぇだろ。診てくれよ)

(眼科行きなさい)

(おい、つれねぇな。親だぞ)

(どちみち、眼鏡もコンタクトも眼科行かないと作れないから)

(そうなのかい)

(うん)

(わかったよ、お前弁天町の眼鏡屋だよな)

(そう)

(どこいるんだい、今は)

(天保山だよ)

(何してるんだい、デートかい)

(1人だよ)

(何してるんだい)

(恐竜展に来てるよ)

(お前まだ恐竜好きなのかい)

(いいだろ、別に)

(まあ、わかったよ。勝手にせぇよ)

(わかってんねん)

(娘よ父は眼科に行ってきます)

(キショいねん)

(愛してるで、娘)

・・・・

返事せぇや

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⑧ンタク

ン、もう、お父ちゃん
困ったもんやで

今何時やろ
ン?
動いてへん
アカン
壊れてしもうたわ
修理
そうや
トイケさん

(トイケさん)
(うん、ンタケちゃん)
(時計壊れてしまいました)
(ホンマに、ウチ持ってくる?)
(よろしいですか)
(うん、いつ来る?)
(明日でもよろしいですか)
(ええよ、待ってるで)
(ありがとうございます、先輩)
(ほな、西九条やで)
(はい)

ンよっしゃ
先輩に会えるで
時計ちゃん、ありがとう
やつして行くで

#HAMIRU
#ンタク
#わ
#20241130

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⑨トイケ

ンタクちゃん

そろそろ来るかな

カレンダー

なんやったっけこれ

(なあ、ミソジ)

(うん、なに?)

(カレンダーに機種変更要って書いてあんねんけど)

(ああ、それキャンペーンの終了や)

(お前んとこで機種変したよな)

(そうや、2年前や)

(機種した方がええんか)

(せやな、ほとんど同額で新機種いけるで)

(明日行ってええか)

(ええよ、待ってるで)

(うん、ほな)

(野田な)

(うん)

いらっしゃいませ

先輩

ンタクちゃん

#HAMIRU

#わ

#トイケ

#2024/12/7

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10.ケラガー

そろそろトイケ来るかしら

(すいません)

(はい、島福んメーラー)

(出前お願いします)

(はい、どうぞ)

(大根ラーメン2丁)

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#わ

#ケラガー

#20241213

11.タマゴ

よし、出前も終わったし

大阪駅行って

デパート行って

香水買おう

#わ

#タマゴ

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12 アレマ

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いらっしゃいませ

ハミル阪和デパート

フレグランスでございます

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#HAMIRU

#わ
#アレマ
#2024104

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