馬花 91-100

「先生さようなら」

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「みなさんさようなら」

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「ウサポ行くよ!」

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「ポっ!」

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放課後

3年生のアユラとウサポは4年生のユーリに会いに行く
無論ウサポの目的はユーリをミコルENへ連れ帰ることだ
アユラはウサポの狙いは存ぜぬが、少女ながら、
ただウサポのユーリに会いたいという要望に応えた

「ユーリ!」
「アユラ!」
「ちょっと待って!」
「はいはい」
「ウサポ!ユーリだよ」
「ぴょんぴょん」

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アユラはユーリの隣に立つ
2人の年は一つ違いだが、上下関係はなくBABYの頃からの誼は尊く姉妹の様な間柄だ

アユラが響く
「ウサポ!早く!」
ウサポは四つ脚の動きが乱れている
「ぜいぜい」
「なんでウサギが遅いのよ!」
「持久力ないの」
「亀に負けちゃうよ!」
「それは言わないでポ」

ようやくたどり着いた兎をユーリは物珍しそうに見つめた

「ウサギじゃん」
ユーリはこの上なく的確な言葉を差した

「ユーリ今日からクラスメイトのウサポ」
アユラは両名とも知り合いであるという優位性がもたらす”得意気”を徐にしてウサポとユーリの間を取り持った
「ゼイゼイ、ウサポだよ。ユーリちゃん」
「う、うん。ウサポよろしく」
「うん宜しくポ。」
親睦の門出のシルシとして耳を畳んで挨拶をするウサポ。人のお辞儀と同種の礼儀だ

「ウサポがユーリに会いたいって言うからね」
「そうなの?」
「うん、そうなの。ユーリちゃんは幸せ?」
「えっ」
ユーリは少し訝しげな表情を見せて、頬の赤みを少し醒ました
「なんでそんなこと聞くのよ」
「ユーリは幸せに決まってんじゃん。妹のユリリもいるんだよ!」
アユラは口を挟まずにはいられない。女の子だった
「ううん、ちょっとね。ごめんポ」
右耳を畳む
「うん」
少し顔つきが歪むユーリ
呼応して6月の曇天が深さを増して、ユーリの代わりに涙を溢す準備を始めた

「幸せって言えば幸せだけど」
「なんでよユーリ、幸せだよ。私たちは。そうでしょユーリ」
「アユラは’パパ’がいるし」
「えっ、ユーリだってユリリいるじゃん」
「うん。そうだよ。ユリリはもちろんメッチャ大好きだし。でも・・・・」

ユーリは親を知らない。
生まれた時点でハミルENに置かれた。
母のミコルは、父のユメシャがオーナーのハミルENに娘を託したカラダ。

誰一人として仲間が存在しない男に、唯一の光でその存在を照らすことを、思った。
想ってしまった。

そして父のユメシャもまた、ユーリが自身の娘であるという事実は打ち明けられていないから。
それどころか、あの酔い潰れた「交番での再会」以降は連絡は途絶えているから。

夢者は己の娘がこの世界に存在していること、すら知らない。オレハヒトリダ

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(
パパ?ママ?
わたしは生まれてからこのことばを言ったことがありません。
みんなにとっては当然のように口を突くそのことばをわたしは言ったことがないのです。

だって、ね

いってはいけないのですから

あこがれのことば

・・・・

ぱまぱま

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これだけは、赦してください
)

ウサポの左耳に一筋の水滴が落ちた
不意の冷たさは二本の前脚を大地から引き離した
ぴょん
跳ねた体躯が反射的に言葉を飛び出させた

「ねぇ、2人とも。
ウチに遊びに来ない、ポ?」

曇天の雲は一滴のみ降らせて
そこから先は

もう

泣くことは赦されなかった

ラブレターを書いたなら

受け取ってくれますか

認めてくれますか

そうですか

置場所に困りましたか

それなら

いっそ

僕の存在ごと

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燃やしてくだされ

・・・・

2023年

晴れ着の若人が酒を堂々と飲み交わしていた頃

一組の父,娘はまだ成人式へは遠い位置に腰をおろしていた

母が他界したこの親子

自然と娘は成長速度を加速させて

有意識とか無意識とか

どうでもいいけど

女に近づく

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手紙渡したんでしょ

まあ

一定の効果はあるわ
スマホじゃなくて

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心持ちが違うでしょ

なあ、アユラ
8歳らしくしてくれないか

チャリルは仕事人間だし
冷たいところがあるから

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・・・・

チャリルとチュリミ
18の頃から交際を始めた
児童養護施設出身のこの2人は
この時28歳だった

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土曜日だし
どこか出掛けない

悪い
仕事のこと考えたいから

そう

・・・・

父アネハは

娘アユラがいるが

結婚はしていなかった

未婚の父だった

それはハミルENの一員であって

其処は結婚することを認めていないから。

すなわち故セイナとは内縁関係だった

2人は娘を授かった

アユラ

セイナは事故で亡くなったが

その前から体調が芳しくなかった

事故の一因だった

アネハは体調不良を仄めかす内縁の妻を

精査させることが出来ず、己を責した

そうした感情は未来の幸せに対して

臆病の風を吹かせた

内妻が死して、8年の月日が経過していた

8年が齎した時の療養によって

ある女に恋はできたが

いいのか

そのオンナには

恋人がいるし

死んだウチヅマを愛したまんま

あいつは逝った

嫌いになって嫌気が刺して別れてでもいりゃあ、いくらでも新たな女に進めるのに

愛したまんまに逝っちまった、

俺のケジメは

死んだ女の乳房に残ったままだろ

俺は既に45だし

28の女に恋して

愛だ恋だの撒き散らして

恥晒しに

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なるのが男の使命だろう

馬花 93

クマノミは雄なのか雌なのか

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5年生に転入してきたサクラは・

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じゃあ僕は・

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地球には男と女しかいない,とかさ

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勝手に決めないでよ

・・・・

クマノミはオスだ、産まれはね
群れのなかで一番大きな固体は
メスに性転換する

・・・・

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ううう!
女の涙と男の血が止まらない
ピンクはどっちよ!
女の色!男の色なの!

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左目が悶えるんだ

ままに

僕は染色体に虐められて、
しまった

男の月経が始まったし
すると
女の涙が流れるの

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クマノミさん
ねぇ
カクレクマノミさん
隠れなくていいんだよ

サクラもだよ

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な,な

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虹(ナナ)になるの

馬花 95

2023/4/1

乙女チュリミは29歳の誕生日を迎えた

その日、18の齢から交際を続けているチャリルと誕生日を祝った

その前日

3/31

乙女は別の男と過ごし、

天秤を揺らした

・・・・

45アネハはチュリミを映画に誘った

弥生の末日を約束の時として、名古屋市内に構えるツバキ座なる映画館で落合う手筈を整えた

門構えには椿の花がその美徳を春ばるしく繚乱させて、誇りと高貴を示した

落ち合った折に、乙女の髪の香が男の鼻腔を刺激した

ヨーロッパは巴里を舞台に、乙女が空想を種として花々を実らせていく。縦横無人に若さを横行闊歩する主人公は怪しげな表情で規則正しく前髪を揃えていた

スクリーンの中の乙女も殻を破る恋をして、美しき女性へと変貌する筈だった

チュリミは恋人がいながら、映画館の暗室で隣に座った男に恋をしていた。

一途な乙女

一途で純朴な女の方が、二股たりうる状況に陥りやすい。至極当然なことで、世間で囁かれる不貞のような状況は、表面的な事象の解説に過ぎない。

男も同様

一途であるが故に、自然と恋人との交際期間は長くなる。3年、5年。10年と

交際期間が長くなれば、恋の天秤を揺らす可能性が高くなるのは当たり前のことなのに。

しかし、純潔こそがあるべき姿と世間的な情報に侵されたステレオタイプは

“一途であること”が己の誇りを構成してしまう。

故に一途な女は、誇りを本能が蝕み、迷い苦しむ。

3・5・10交際して他の男に全く感情を抱かない不自然さが、”世間の発表する” 

愛  純粋  美しさ

不自然過ぎて、バカミタイ

チュリミは恋人チャリルと11年交際していた

今、彼氏の子供を妊娠している

しながら、男とデートをした

映画の最中の胎動がトキメイタ

喜んだのか、怒ったのだろうか、

映画はクライマックスを迎えた

泣けてきた

男の右手から手巾が差し出された

受け取らずに、右の手のひらで涙を拭う

ハンカチを受け入れたら、お腹の赤ん坊がまだ暴れるのが怖かった

映画の内容は頭に入らなかった

泣けてきたのは

手巾を差し出した男が好きだと

確信してしまったからだった

コウノトリの嘴が臍を啄いて

🦅

”土曜でなけりゃ映画も早い

涙ぼろぼろ ぼろぼろ

こぼれて 枯れてから”

🦅

こぼれた笑みは美しく

悪かった

馬花 96

「ユーリどうする」
「うん、微妙じゃね?」
「うん、行ってみてもいいけどね」
「ミコルENだって。変な名前ー」

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2023/1

アユラとユーリが白い息を交差させていた
ウサポに家に来ないかと誘われた帰り道

つまりミコルENに来ないかと、
ウサポは任務を着々と遂行して
ユーリをミコルへ引き合わせれば
成功だ

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4年生のユーリと3年生のアユラには
警戒心はなく、
ダルいかも?
程度の感覚だった

アユラは困った時には、いつも

「ねぇ、ルチカに聞いてみようよ!」

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「うん、いいよ僕も行くよ」
「ホント!良かったねユーリ」
「う、うん。じゃあ」
「ユリリは連れて行くか?」
ユーリの妹ユリリ1年生
「ユリリは行けないよ」
「なんで?」
「あおぞらクラスだから・・・」

「そうか、じゃあ3人で行こう」
ユーリはいまいち気が乗らない面持ちだったが、アユラは横断歩道を渡る子供の如く
「よし!」
右手を空に突きさした

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「ルチカ、おかえり」
「母さん、ただいま」
母子。父親は今はいない
「今度友達の家に行ってくる。
アユラとユーリが一緒」
「あら、そうなの。めずらしいわね」
「うん」
「いつなの?」
「来週あたりかな」
「なんていうお友達?」
「ウサポとか言ったかな。アユラのクラスに転校してきたんだ。ミコルENとかいう家から来てるってさ」
「ミコルEN」
「うん、変な名前だろ」
「ダメよ、絶対駄目!行っちゃダメ!」
「えっ、母さん・・どうして」

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「ルチカ!」
近所住まいのアユラがルチカの元を訪れた

「アユラ」
「ダディがウサポのミコルENに行っちゃいけないって」
アユラの父アネハもまた、友人の家つまりミコルENへの訪問を、子供達の交流を妨害していた

「アユラ、うちもだ。母さんが」
「どうして!」
「何かあるな」
「そうだよね。おかしいよ!」
「ユーリは?」
「わからない。どうしよう」

「行こう。」

「大丈夫?」
「明日だ」
「明日?」
「大人達に探られる前に動いた方がいい」
「わかった。ダディには言わない方がいいよね」
「あゝ、言ったら止められる。大丈夫だよ放課後の1時間か2時間。夕方には帰れるし。学校でバスケしてたら夢中になったとか言っておけばいいさ」
「うんうん、な、なんかドキドキしてきた!」

・・・・

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「おねいちゃん、コチョコチヨ」
「だは!ユリリやめて」
「おねいちゃん🎵」
「ユリリ、あおぞらクラス楽しい?」
「うん、めちゃくちゃ楽しいよ」
「そう」
「うん」
「実験してるの?」
「うんうん、実験実験」

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「ポニテ先生」

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「あっ校長先生」
「あおぞらクラスのユリリはどうですかね」
「途轍もない能力です。1年生ですが、高校生レベルの問題も解けます」
「そうですか。期待してますよ」
「ええ、でもこれ以上成長したら私に手綱がとれるか」
「大丈夫ですよ。ポニテ先生」
「頑張ります」
「なにしろ我が校、開校以来2人目の
 あおぞらクラス生ですからね」
「はい、超天才クラス・・」
「パオーン!」

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子供が歩く

ウサポを先頭にルチカ、アユラ、ユーリが横一線に歩いて行く

H小学校を出て子供の足で20分ほど、乾の方角にミコルENはある
逆に巽の方向へ、同じく20分ほどの場にハミルENはあった

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車道と歩道が区別されていない名もなき道を4人は歩く
ユーリは傍らに生えている猫じゃらしを左手で遊びながら歩いた

ウサポは軽快に飛ばした
ミコルENにユーリを連れて行くという、女主ミコルの期待に応えることができる
ミコルENのプロタゴ軍団たちは世界で行き場を失った者たちで、救い上げてくれたミコルは

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絶対的母だった

学校は15時に終わったから、30分後にはミコルENに到着する
ウサポはミコルに’よくやったね’と撫でられる至福を想像して軽やかに飛んだ

「ウサポはやっ!」
アユラが吠える
「みんな早くピョン!あと5分くらいだよ」
人は100mを10秒で走れば、時速36kmだ
ウサギは時速70〜80kmで走る種もいるという

・・・・

ミコルENに遊びに行くことを決めたハミルENの子供たち
ウサポに誘われた3年生アユラと4年生ユーリに5年生のルチカを加えて、招待の翌日金曜日に早速ミコルENに向かう

大人たちがなぜかミコルENに行くことを止めようとした
寧ろ子供たちの好奇心に火を灯した

ただ少し、ルチカとアユラは未知の世界への通りを楽しんだが、ユーリはなにか重たい気持ちがしていた

「着いたピョン!」
「でっか!すごいマンション!」
アユラは興奮を隠しきれない
庶民派、低空を居城としているハミルENの面々には入城したことのないようなマンションだった
「やっぱ、やだな」
ユーリが呟く
「えっなに。ユーリ」
アユラが反応した
「だってこんな大きいマンション入ったことないし、怖いよ」
「そんなことないよ、行ってみようよユーリ。ウサポもいるんだし」
「うーん」
「ユーリ、とりあえず入ってみようか。嫌だったらすぐ帰ればいいさ。その時は僕も一緒に帰るから」
「う、うん、それじゃ」
年長者ルチカが場を説得した

常にルチカの言葉には強さと畏怖があって、その言葉には反駁できない
リーダーの資質はこの頃から示されていた

「行くピョン!」
褒めてもらいたい

ウサポが暗号を入力してガラスが開いた。4人はエレベーターに乗り込み、ウサポは最上階の18Fを押す。
流石のアユラも黙った。最上階の優雅に相応しい態度をとらないと、と子供ながらに弁えた

・・・・

「ただいまピョン!」
ウソポが玄関を開け、光が広がる

ミコルがいる
あの時、恋人に娘を譲ってしまった後悔の念を今、成仏させたい

娘の背丈を確認してまだ間に合う、と

君を私ので抱きしめ、おかえり、と

君の住処はココだと言いたい

「お邪魔します」

おじゃまします

面目躍如、誇らしげな表情でウサポが子供たちを引き入れた

娘がいる

この両腕の届く位置にいるのは、

赤子の時、

3ヶ月で手放してしまった

10年の月日が経っていた

あのヒトリボッチの男に娘を託した

私が執りなした決定なのに

なのに

アイツを恨んでしまった

私はいつも、うまくいかない

ミコルENからは

ミコルの他に

4天王からイシス

20団員の1人プルマ

そして

ミコルの左腕ロオド

右腕にはHANAがいるが

ツッパリスタイルで子供たちが怖がるといけないので遠慮してもらった

コワモテの見かけによらずスーパーが好きで、新鮮な野菜や鮮魚を見たりすることが趣味だった

しかし、いつもじゃがりこを買ってくる

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「い、いはっしゃい」

声が震えた

いつも毅然とした態度のミコルが動揺した

四天王の中でも、あらゆる面において能力最上位のイシスがフォローする

「どうぞこちらへ」

3人の子供たちはリビングへ招かれた

「うわぁ」

お淑やかを決め込んでいたアユラが、本当の声を発した

そこは、ヨーロッパ調の家具、とりわけ北欧ブランドで揃えられたような煌びやかな世界だった

「うわぁ」

アユラのあとにユーリが続いた、声はユーリが視線した大きなスタンド鏡に反響して部屋を包むようだった

ルチカは注意深く部屋の中を見回した

(よく来たわね)

うまく声が出ない

ミコルは明らかな己の変調に焦りを感じた

「どうぞこちらへ」

イシスが場を取り持って、3人掛けのダークブラウンのソファへと誘う

大所帯のミコルENにはレトロ感を醸し出す木目のテーブルを中心に3人掛けのソファが4つ置かれている

子供たちがソファを背にして、左からユーリ、アユラ、ルチカの順番に座る

対面のソファに左からミコル、イシス、プルマが座った

ミコルの前にはルチカ

アユラの前にイシス

ユーリの前にはプルマ

ミコルは避けた

あの娘の正面に腰を据えてしまっては、私の尻は大量のボンドを罰ゲームで仕掛けられたようにベッタリとソファと一体になって、全ての行動を奪ってしまうだろう

ミコルが平常心を失っている様を自然と察知して

左腕のロオドがウサポの耳と耳の間を撫でた

「よくやりましたね」

「シッシ^_^」

早くミコルに褒めてもらいたい

プロタゴ軍団 20名

四天王 4名

ロオドとHANA

ミコル

もう一人ヨーロッパに修行中の人間が1人いる

計28名

世界の片隅の存在の者たちは皆がフォロー仕合い

生きている

・・・・

心情察知能力

プルマが震えている

心、とりわけその場にいる最も上位の者の心の状況が連動して出てしまう

プラマはそんな能力があって、この場ではミコルの心が伝わる

ミコルは緊張を必死で隠し取り繕うが、プルマが震えてしまう

ミコルENの民はプルマの様子を確認して、ミコルを知る

喜びも隠せない

・・・・

「ウサポの友達でしたね」

イシス

「うん、私のクラスに転校してきて。ね、ウサポ!」

「うん、アユラちゃん!」

上機嫌に跳ねた

「そちらのお嬢さんは」

「こっちはユーリで4年生、こっちがルチカ5年生」

真ん中に座っている2人が言葉を交差する

「そうですか。ウサポから聞いておりますが、皆さんハミルENのお子さんということで」

「そうそう、私たちはみんな生まれた時から一緒だから」

アユラが落ち着いてきて、少しばかりの余裕が生まれた。質問を返す

「みんなは?」

「うん、そうですね。私たちはみんなバラバラでしてね。そちらのミコルさんが我々を救ってくださってね」

「ふーん、そうなんだ」

ミコルがまだ落ち着かぬ面持ちで、左の口角を引き攣り上げた

「救うって」

言葉が刺す

「えっ」

ミコルは虚を突かれた

「えぇ救うっていうのは、我々は寂しい存在だったんですよ。それを1つにしてくれたんですよ。1人ずつが集まれば集合体になって寂しさは解消されるのは当然なんですけど。言うのは簡単で。実際にそれを実行する人間が必要なんです。我々には、なんて言いますかね、指導力とか推進力とか言いますかな、持ち合わせてないから可能ではないんです。

可能かつ事を為せる人物と出会えるかと言う」

イシスが落ちかけた我々を掬い上げた女の解釈を講じた

「優しさだろ」

えっ

「根底にあるのは優しさだ。リーダーシップとか主導力なんか言うのは二の次の筈だ。企業とか組織ならそういう資質が問われるだろうけど、此処が築こうとしているのは家族だから、優しさであり、MOTHERの器で皆が乗れる受け皿になること」

この子

ミコルは正面座る、少年を見つめた

少しこの子は危険かも知れない

・・・・

1年と半年が経った

令和6年に暦が移り

街は少しばかり樹木の葉が色を変えて

枯れ葉の趣きと長袖の腕まくりが散見される

季節は移り変わり

ルチカ!

アユラが追いかける

6年生になったルチカが

振り返る

あゝ、アユラか

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もうすぐ中学生だ

・・・・

「親なんていらないし

 私を捨てた。

 ハミルENのみんながいるし

 私は幸せ

 妹のユリリが私の唯一の

 家族だし」

あの日

  流れ流れ着いた

   会話でユーリは話した

        ミコルは微笑を浮かべ、訊いた

    プルマの涙が止まることはなかった

        ・・・・・

        ひさかたに

        再会したり

        このははは

        葉は枯れようとも

        涙は枯れぬ

アネハは準備した
恋するあの人を奪う
好きだという気持ちは既に伝えたし、
花束をしっかりと購入して交際を申し込む
12本の赤い薔薇を赤子を抱くように抱えた

彼氏に殴られたって

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最低だ
不貞だと
不潔だって
言われたって
自分に嘘をつく
なんてしたくない

先日の映画館も彼女はきっと
喜んでくれた筈だ
積年の想いを、今

いつもの公園で夕方に待ち合わせしている
大袈裟だって笑われるかもしれない
俺は40代も半ばだし、
スーツを着込んで


現れたのは

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彼女ではなかった
2着のスーツが向き合った

「チャリル」
「あゝ、アネハ悪いな」
「いや」
「聞いたよ、ていうかな」
「すまない」
「・・・
   お前の手紙
見たよ」
「・・・」
「あいつずっと持ってたみたいだな」
「わるい」
「風呂の中まで」
「え」
「お前のラブレターはびしょ濡れだ」
「・・・」
「諦めろ、俺の女だ」
「殴ってくれ」
「あ」
「頼む」
「何が頼むだよ」
「諦めきれない」
「ふざけるな」
「諦めろ」
「殴ってくれ」
「勇気を持って手紙を書いた。俺がいるのを承  知で勇気を振り絞って告白をした。
スーツを来て花束を持っている。
どうするつもりだ」
「お前から奪うつもりだった」
「あいつは妊娠している。
俺の子だ」
「なに」
「聞いてないだろ」
「なんで」
「なんでって。もう3ヶ月だ。
お前には言えなかったみたいだ」
「そんな」
「じゃあな」
「そんな。殴れ」は
「そういうの面倒くさいんだよ」
「そんな」
「勇気を持った!んだろ」
「・・・・」
「なんか、お前の手紙良かったよ。
悪かったな。読んじまった。悪い。
勇気の文字に免じて、チャラだ」

チャリルは立ち去った

1人佇むアネハ
恋の犯行は未遂に終わった
略奪とは
まず、男とケリをつけ。まつ毛が湿る

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12本の薔薇が香る
‘私と付き合ってください’の花言葉は
行き場を失った

美しい薔薇の姿と香りが
情けなさを引き立たせる

薔薇を強く、力強く抱きしめた
薔薇が包装に押し付けられて香りが増した
「大丈夫、大丈夫」 
心が堪える

大丈夫、大丈夫

今夜の月が東から上がってきた

君の瞼がアトリエとなって月がヒカった涙を工芸した

馬花 100

エメラルドの山

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馬花2章汚れた熊の右花と左心
深い深い森の中で汚れた看板に

 

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